第13回

部屋にバス、トイレがついていますか?

 「澤の屋は外国人宿」と言われますが「日本人でも泊れますか」という電話もかかってきます。

 「もちろん、どこの国の人も受けています。」

 「それでは、○月○日2人部屋空いていますか。」

 「その日は、バス、トイレなしの部屋でしたら空いていますが」

 「それじゃ結構です」で終わりです。

外国のお客さまの場合は、少し違います。

 「それでは共同浴室がありますか。」

 「はい、2つあります。カギをかけて一人づつ使って貰っています。」

 「では、予約をします。」となります。

 旅が目的で、宿は手段という外国のお客さまには、部屋にお風呂がないことは、そんなに気にならないようです。

 そんなせいもあるのでしょうか、宿泊客の9割が外国のお客さまで、日本の人は1割です。

 ところで、外国のお客さまを受け入れてから共同浴室はいくつかの点を変えざるを得ませんでした。私共は全室12室。バス。トイレ付きの部屋は2室だけです。共同浴室は1か所だけでしたが、他の人と一緒に入れないと言われて、2か所に改造しました。

 それを男女別でなく、カギをかけて家族風呂のように、1人または家族で使ってもらう形にしました。朝もシャワーを浴びたいと言われて使えるようにしました。使用時間は、風呂が午後5時から午後11時、シャワーは午前6時から深夜の1時までです。

 お湯の温度は、欧米の人に熱いと言われて2度程さげましたが、日本の人にとっては少しぬるいようです。シャンプーとバスタオルも用意しました。「浴槽の中で石鹸を使わないで下さい。」などと書いた英文の注意書きも表示しました。

 ところで外国のお客さまでもバス、トイレがなければ予約しませんという人もいます。しかし、現在の私どもでは全室にバス、トイレをつけるのは構造的に無理です。

 新築をするほどの資金はありませんし、借入をすれば、現在の素泊り4700円の宿泊料金は値上げせざるを得ません。結局、このままの形での営業になります。

 「ホテルはどこも満員だった」と言って、初めて泊りに来た日本人のお客さまが

 「お風呂の浴槽も洗い場も広くて気持が良かった、また来るよ」と言われると、正直ホッとします。

日本観光旅館連盟 日観連月報より

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