第19回

洋朝食ができますか?


 外国のお客さまに「洋朝食はできますか」と言われて「できません」と答えていました。
ところが、たびたび言われるので、外客受け入れ先の先輩旅館のやしまさんに相談すると「うちは洋朝食を出していますから見に来なさいよ」と言われました。
 さっそく出かけて、見せてもらって、あまりにも簡単なので拍子抜けしてしまいました。
お皿の上に、パンをニ切れのせて、それにゆで玉子を添えて出すだけです。パンは備えつけのトースターでお客さまが焼いて、コーヒー、紅茶もインスタントでセルフサービス。テーブルにバター、ジャム、マーマレードが置いてあるだけです。
 これなら、うちでもできると、さっそく始めましたが、ゆで玉子の代わりに、トマトとキャベツを添えた目玉焼きにして、フライドエッグと表示しました。
 ところが、ある日、女性のお客さまが「スクランブルエッグが食べたい」というので、できないと断わると、自分で作るからと調理場に入ってきて作りはじめました。フライパンにバターをいれ、ミルクを加えた卵を入れ、割りばしでかき回して出来あがりです。
 これなら出来ると、メニューにスクランブルエッグを加えました。卵の焼き方も、ターンオーバーが両面焼き、サニーサイドは、卵の黄身の上に膜をかけるということなども、お客さまに教わりました。
 ジュース、トマトジュース、ミルクも出しましたが、氷を入れたら味が変わると言われて、今では氷を入れずコップを冷蔵庫で冷やしてそれにいれています。

 朝食の時間は、午前7時30分から、9時までとしましたが、9時5分過ぎにきた、イタリアのお客さまに「食事時間が終わりました」と言うと、「5分遅れて食事が出来ないなんて、日本はクレージーだ」と言われてしまいました。
 それから、5分位なら受けようかと思いましたが「それでは6分遅く来た人はどうするのよ」と家内に言われて、きりがないので、9時が過ぎると断っています。
 料金は、トーストのみ200円、トーストと卵料理300円です。この料金は、20年前に始めた時と同じで値上げしていません。
 これは、卵とパンの値段が安定している事と、20年前は、1ドル260円だったのが、現在は1ドル120円前後ですから、せめて朝食だけでも安くしておきたいと思ったからです。
 もっとも、9年前から一諸に仕事をし、経理をやっている息子には「いろいろな経費は、少しずつ値上がりしているのだから、きちんと原価計算をしなければ」といわれています。

 家内と二人で海外旅行に出かけ、泊まったB&B(ベッドアンドブレックファスト)の朝食は、どこの国でも、パンの種類も豊富、飲み物にハムやチーズなど盛りだくさんでした。
 それにくらべると、私どもの洋朝食は、コンチネンタルでも、アメリカンブレックファストでもないものですが「充分ではないが、これでもいいか」という気持ちでやっています



日本観光旅館連盟 日観連月報より 

  

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